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街とその不確かな壁

村上春樹の新作が6年ぶりに出て、ちょうど欧州までの出張に往路を使って一気に読み切りました。

村上春樹の著作で主人公が40代後半というのは最年長かもしれません。今回の出張はドイツのフランクフルト空港を経由したのですが、毎回ドイツの空港に着陸する際には「ノルウェーの森」の最初で主人公がミュンヘン空港に降り立つシーン。この時の主人公が40歳前で最年長かなと思い調べてみたら、サイトによると最年長は「海辺のカフカ」のナカタさん、53歳だそうだ。うーんナカタさんは読者自身が感情移入するタイプじゃないから(ひょっとするとナカタさんこそが感情移入するタイプだ、と思う人も世の中にはいるのかもしれませんが)今回の主人公が私の理解する範囲では最年長でいいのではないでしょうか。

村上春樹も来年で後期高齢者になり、主人公もそれなりに年を取った方が作品として落ち着くのでしょうか。私が初めて村上春樹の著作を読んで30年以上になりますので、読者もそれなりに年月を重ねているのでしょう。



作品自体は、洗練され落ち着いた村上春樹らしい作品で安心して最後まで見切れることができました。以前のような青臭く極端な描写もなく、例えば子安さんは社会的にしっかりとした人として書かれていて、いるかホテルで羊の恰好をして潜んでいるわけでも無く、主人公と同じく40代後半の私にとっても安心して読めます。

喪失感と現実/非現実の併存が村上春樹のテーマだと思っており、今回もそれが遺憾なく発揮されています。また単角獣は何のメタファーだったのでしょうか?人間の欲望なのか、架空の街での永遠性の対比(または永遠性を実現するための生贄?)として置かれたものなのでしょうか。


村上春樹は母校にまとまった寄付・寄贈をしたりとご自身の終活に向けての活動を始められているのかと思っています。70代半ばでこの大作を書ききるエネルギッシュを感じるとともに、40年前に「不本意だ」と思っていた著作を書き直し落とし前をつけるということも終活の重要なひとつなのかなと思います。


今回はじめてKindleで著作を読み切りました。


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